1クラスあたりの生徒数のことについて議論するときによく出される疑問がいくつかあります。それらについて考えていきたいと思います。

 まず大人の側からよくだされる感想として「私たちが子どものころの学級も40人だった。それで,特に大きな問題もなく運営されていた。だから今でもできないはずはないのではないか。」というものがあります。このことについて考えてみましょう。

ある規模の集団をまとめて運営していくためには大きく分けて2つの方法があると思います。

 

 一つは「個性を重視した運営方法」です。リーダーが,グループメンバー一人一人を個性を持った人格ととらえ,それぞれの欲求や考え方をよく知り,それぞれにあった役割を与え,お互いの関係を柔軟に調整していく,という方法です。

 もう一つの方法は「集団の維持を重視した運営方法」です。リーダーがその集団を維持していくための価値観を提示し,それをもとにしたルールを設定し守らせる,という方法です。

 もちろん,この二つの方法論は,はっきり分けられるものではありません。実際の集団運営には二つの方法論がミックスされて使われています。現実の場面では,どちらの方法論がよりメインになっているかということが問題になります。

 ちょっと想像してください。あなたが,大人のグループのリーダーだとします。一番目の「個性を重視した方法」でグループを運営していこうと考えた場合,何人くらいならその方法論でグループを運営していくことができるでしょうか。この方法によって集団を維持運営していくためには,一人一人のことをかなり深く理解しておく必要があります。リーダーの能力にもよるでしょうが,せいぜい5~6人くらいが限界ではないかと思うのですが,いかがでしょうか。グループの規模1020人になったら,かなり難しいのではないでしょうか。それが40人という規模だったらどうでしょうか。まずこの方法で集団の維持運営は難しいのではないでしょうか。おそらく必然的に二番目の「集団の維持を重視した方法」に頼らざるを得なくなると思います。

 さらに考えなくてはならないことは,学校で教師が対応している集団が,「判断力が未熟な子ども」であるということです。このことは,「個性を重視した方法」がさらに難しいことを意味しています。

 したがって,学校でとられるリーダーシップの方法は,どうしても二番目の「集団の維持を重視した方法」がメインになってしまうと思われます。しばらく前には「管理教育が日本の教育の最大の問題だ」という論調が優勢だった時期がありました。しかし,学級運営の方法がそれほど大きく変わったという実感はありません。それは40人という規模の子どもを一人の教師がまとめ維持していかなくてはならないという現実があるからだと思います。教育の理念としては「一人一人の子どもの個性を大事にする」ということが叫ばれますが,実際に学級運営の場でそのことを実現することは極めて難しいことだと思われます。

(次回に続く)

(2012.8.8豊永)