不登校支援ネット通信「家屋の構造と自我発達」

 随分間が空いてしまいました。前回は、西洋型家屋と伝統的日本家屋のつくりを比較し、いかに家のつくりが自然や文化的環境の影響を受けるかについて考えました。今回はさらに、家のつくりと自我発達について考えを進めたいと思います。  多くの西洋の家屋では、レンガなど厚い壁を用いて作られ、構造上各部屋は最初から用途が決まりがちでした。子供部屋は早くから与えられ、子供は独立した個人であることを意識づけられて育ちます。西洋の映画で、幼い子供が眠れずに、枕を持って両親の寝室に行く場面がしばしば登場します。これは、自分の欲求は自分で行動して満たす必要があるという考えが、早い時期から身につく一例と考えられるのではないでしょうか。このような中で育つ西洋文化においては、自己主張ができること、自分の立場を明確にし、言葉で議論できることが重視されます。そのような中で育つ自我は、「雄弁は金」という諺があるように、自意識が鮮明に出る、能動的傾向を帯びたものであったと考えられます。その反面,相手との「共感」よりも「自己の主張」が優先されやすく,相手の話に耳を傾けよく理解した上でお互いの関係を調整していくということが苦手になりやすい傾向も生じるようです。
 一方、伝統的日本家屋では、薄い障子やふすまで部屋が仕切られ、「川の字で寝る」に象徴されるように、ある程度大きくなるまで親子は同室で寝起きしていました。そんな中で、他者の存在を常に意識して育つと、相手が声高に自己主張しなくても、相手の意図を汲むことのできる配慮や洞察力が身につくと思われます。「常に相手の気持ちや状態に配慮しつつ自分の行動を決定していく」ということが無理なくできるようになるでしょう。
反面、努力して自己主張せずとも相手は自分の言いたいことをわかってくれるだろうという「甘え」も生まれやすかったと思われます。そのような暮らしの中で発達する自我は、全体の中の個、つまり関係性を重視した、受動的傾向を帯びた自我になりやすいと考えられます。「沈黙は金なり」に象徴されるように。日本人は、他からの情報を取り入れ真似るのは上手だが、個性が育ちにくいと言われるのも、このような自然環境と家のつくりが影響しているのかもしれません。
 さて、現代社会に戻ってみると、家のつくりには伝統的日本家屋の形の継承や輸入文化の影響などが様々に混在していると思われます。どのような自然や文化の影響を受けて、どのような家のつくりの中で育ち、自分の自我が形成されてきたのかを振り返り、今後の子供達の自我形成のためにはどのような家のつくりが望ましいのかを考えていきたいものです。
                                         2015.7.22竹下