ストレスと子どもの発達 その4「必要なのはどんなストレスか?」

  前回は、「ストレスがあるからこそ人格の発達がある」という趣旨のことを書きました。では、現代の子どもたちはあまりストレスにされていないのでしょうか?それとも過剰なストレスにさらされて弱っているのでしょうか?

 この問いに対しては、YESでもありNOでもある、と考えます。

 例えば、次のような種類のストレスはかなり減っているのではないでしょうか。「友達と喧嘩をする」「年下の子どもたちの面倒をみる」「子どもどうしで遊ぶためにルールを工夫する」「家でお手伝いをしなくてはいけない」「親だけでなく祖父母など、多くの大人の相手をしなくてはいけない」「地域社会の行事に参加し、多くの大人の相手をしなくてはいけない」などです。

 少子化、遊びの変化、大家族から核家族への変化、地域社会の崩壊などにともなって、どれも子どもたちが体験する機会が大幅に減ってきているストレスです。しかし、よくよく考えてみれば、これらのストレスを体験し、試行錯誤しながら解決策を発見していくことが、子どもの社会性の発達にとても大きな意味を持っているのではないでしょうか。

 逆に次のような種類のストレスは増加しているのではないでしょうか。「親が忙しく、あまりかまってくれない。」「親は家にいても他のことを考えていて、子どもの話をちゃんと聞いてくれない」「親がストレスが抱えていて、ちょっとした問題に対し必要以上に強く叱責される」「家庭内がピリピリした雰囲気で、家にいてもあまり気が休まらない」「親と学校の先生以外の大人が面倒を見てくれるという機会がない」「学校では友達どうし協力したり、助け合ったりする雰囲気がない」「ちょっとしたことでクラス内でいじめの標的にされる」などです。

 家族構造の変化、社会のストレス増大、地域社会の崩壊、モラルの低下などが背景となって増大しているストレスです。これらのストレスは、子どもたちの人格の発達にプラスになるというより、マイナスに働くのではないでしょうか。保護者を代表とする大人から縦の関係で与えられる圧迫は、子どもには解決できません。そのストレスが強く働くと子どもには強い緊張状態が持続させられることになります。このことは、「大人自身が社会的な場面で解決できないストレスを子どもにぶつけて解消しようとしている」ととらえることもできます。つまり、まだ社会的なストレスを解決するだけのスキルを持っていない子どもに、本来大人が解決すべき社会的ストレスを与えてバランスをとろうとしているということになります。また、大人と子どもという縦の関係でなくても、友達どうしで、あまりにいびつに「いじめる-いじめられる」という関係だけが強くなると、同じように子どもだけでは解決できなくなり、子どもの人格の発達には悪影響しか残らなくなります。

 「ストレスが子どもの発達には必要」だと前回書いたのですが、どんなストレスであっても子どもの発達に有用というわけではありません。子どもたち自身が自分で試行錯誤し、解決できるストレスでなければ逆に人格の健全な発達を阻害してしまうのです。

 まとめると次のようになります。現代の子どもたちは、必ずしもストレスフリーの状態ではありません。むしろ、自分たちではどうしようもないような種類のストレスを与えられる機会が増えています。逆に、子どもの人格の発達に必要なストレスに関しては与えられる機会が減っているということです。

 今大人としてすべきことは、子どもたちに与えられているストレスがどんな種類のもので、人格の発達上どういう影響を与えるものであるのか、しっかり考えること。次に、与えるべきでないストレスを軽減し、与えるべきストレスを与えるにはどのような方策があるのか、考え実行することではないかと思います。

2012.4.16  豊永