自我の自立について考える(1)

 青年期の課題として「自我の自立」というテーマがあります。少しこのことについて考えてみたいと思います。

 近年の「自立」というイメージにはかなり気になる点があります。例えば「他の人と孤立した,確固とした自我が存在する」「誰にも頼らず何事も自分だけで問題を解決できるのが自立した大人である」「自立した大人である本人が決定したことには周りが口出ししてはいけない」などです。

 これらのイメージについて考えてみましょう。

 果たして他の人と隔絶したような状態で自分の心が存在しうるものでしょうか?実際には我々の心は常に環境の変化や他者との関係によって影響を受けています。家族が幸せを感じていれば,自分の心も明るく軽くなりますし,反対に不幸だと感じていれば自分の心も暗く重くなってしまいます。家族以外であっても,自分が普段から親しくしている人々の状態が自分の心の状態に直接影響しています。

 誰しも人生上のさまざまな問題に直面しますが,そのときはその問題について自分より優れた知識・経験・技術を持っている人にアドバイスを求めるのが健全な大人というものではないでしょうか?例えば身体の不調があればやはり専門の医師の助言を求めた上で今後の体調管理について考えた方がよいでしょう。

 青年期には進路選択など,人生上にきわめて重要な意思決定を行わねばならない場面に直面します。もちろん本人の意思は十分に尊重されるべきですが,やはり年代的にはまだまだ社会経験の乏しい時期です。より経験を積んだ親や年長の世代が色々なアドバイスを行い,本人と意見交換を行った上で重要な決定を行うことが必要ではないでしょうか?

 このように考えていくと,現在の「自立」にまつわる一般的なイメージにはかなり無理があることがわかります。人は誰しも独りで自我というものを存在させることはできません。実際にはお互いに強い相互依存関係にあり,そのことによって自我が存在していると考える方が自然だと思われます。

 そう考えたとき,自我の自立の条件とは「周りの人々との良好な相互依存関係を維持することができる」ことだと言うこともできると思います。

 しばらくこのことについて考えていきたいと思います。

2013年12月 豊永