「自我が自立している」ということは「周りの人々との良好な相互依存関係を維持することができる」ということです。

 「依存」というとあまりいいイメージがありませんが,問題なのは「一方的依存関係」です。極端な例としては「暴力を振う夫とそれを受け入れる妻」というような一方的な支配-服従の関係があります。このような関係が長くは続かず,やがて破綻にいたるということは明らかです。

 そこまで極端な例をあげなくても,「してもらう」ことばかりで,「してあげる」ことが少なければそれは良好な相互依存関係とはいえません。仕事をしていても,いかに手抜きをするかということばかり考えていれば,給料をもらった分だけ会社との一方的な依存関係にあるということになります。逆に体を壊しかねないくらいの過剰な仕事を抱え込み会社に奉仕することを当然と考えるのは「してあげる」ことばかりで「してもらう」ことが少ない一方的な依存関係にあるといえます。

 近年は若い世代で,自分が何かの問題を抱えていて,その問題を解決するだけの知識や技術を持ち合わせていないのに,「自分の問題だから自分で解決しなくてはいけない」という考えが強いあまり誰かに相談することをためらう傾向が強くなっている気がします。これには,現在の「自立」ということにまつわるイメージが影響しているものと思われます。しかし,自分だけで解決できない問題に対しては誰かの助言や援助を要請し,受け入れるのはしごく自然なことです。

 結局のところ自分が抱えている問題を解決することができなければ,多くの場合周りの人にも迷惑をかけることになるものです。その問題を解決する知識や技術を持っている人の援助や助言を受け入れて問題を解決することができれば,周りの人にも迷惑をかけずに済みます。また,その人は問題を解決する新しい知識・技術を身につけたことになります。次に同じ問題に遭遇した場合には容易に解決することができるでしょうし,同じような問題に悩んでいる人がいれば,その人の手助けをすることもできるはずです。このようにしてより高いレベルでの自我の自立が達成されていくことになります。

 良好な相互依存関係とは,「自分にできることは相手にしてあげ」て「自分にできないことは人に手助けしてもらう」ことでありその関係は「対等でフィフティフィフティ」な関係です。自分の周りの人々-家族や社会-に対して,自分に何ができるかを考えて行動すること,そして,周りの人々からの援助はそれを受け入れ感謝の気持ちを持つことだと思います。そういう態度で生きていくことができるということが本当の意味で自我が自立した状態だと言えるのではないでしょうか。

2014年1月 豊永