自我の自立について考える(4)

 自我の自立とは,言い換えれば「自己実現」といってもいいと思います。

 自己実現とは,

 自己の人生における欲求を自覚し,それを人生において実現することでしょう。そのためには,自分の欲求を知る必要があります。自分がこの人生において何を実現したいのか,よく考える必要があります。それは青年期の大きな課題です。自覚した欲求をもとに職業などを選択することが自己実現のための第一歩となります。人とかかわることよりも技術を使ってものづくりをし,それを通じて社会との接点を持ちたいという欲求の人もいるでしょう。そういう人が人との関わりを中心とした仕事である福祉や教育などの仕事についたとすると,本人はずっと葛藤を抱えたまま生活を送ってしまうことになります。よくよく考えて職業選択をすべきだと思います。

 次に問題となるのは,現実の生活の中でまわりから要求されることと,自分の欲求との折り合いをどうつけるか,ということです。自分の欲求と周りから要求されることが一致することはかなりまれなことだからです。会社などの組織に所属したとします。組織というものはその性質上,設立の理念とは別に,組織の存続そのものが目的化しやすいものです。もちろん組織のリーダーや組織に所属している人々の資質にもよりますが,これは組織というもののもつ宿命とも言えるものです。そして,その組織に所属したとき,人はその組織の価値観を否定してしまうとその組織から排除されてしまいます。したがって,その組織の価値観を受け入れなくてはならないという強力な圧力にさらされることになります。また,組織を構成している個々人にもさまざまな欲求があり,思惑があります。当然ながら自分の欲求とは対立してしまうことも多々あります。

 そういうことで「職業で自己実現は無理」とあきらめてしまいがちです。「仕事とは自分を殺してやるものだ」という意識の方も多いと思います。しかし,それで長期にわたり仕事を続けるということは,自分の感情を圧迫したまま生活を送るということです。結果として生じることは,怒り・苛立ち・不安など心理的な不安定さと,それからくる職業生活・家庭生活・経済生活の不安定さです。感情の圧迫が病気という結果を生むことにもつながりやすいでしょう。

 ですから,自己実現を果たすためには,生活において,何とかして自己の欲求と外的要請との折り合いをつけることが必要です。なかなか容易なことではありませんが,あきらめず,取り組む必要があるのではないでしょうか。それに成功すれば,心理的な安定した状態を手に入れることができ,結果として職業生活・家庭生活・経済生活の安定が得られるでしょうし,病気のリスクも低くなると思われます。

 子どもの教育を考えたとき,その子が将来にわたって自己実現ができるように手助けする必要があります。そのためには,親や教師が特に青年期にその子がどういう欲求を持っているのかを一緒に考えてあげる必要があるでしょう。子どもとそのことについてしっかり話し合う必要があると思います。そして,長い人生において自分の欲求と外的要請とに折り合いをつけるスキルを身につけるさせておくことが必要だと思います。

2014年3月8日(豊永)