子どもたちのPTSD予防及び回復プログラム<グループによる体験のシェア>

 

学校などで子どもたち対象に使えるPTSD回復プログラムを作成しました。 災害などで心に強いショックを受けた子どもたちの健康回復に役立てていただけたらと思います。 また,通常の学級で「コミュニケーションの促進」や「コミュニケーションのトレーニング」などにも用いることができます。

 

作成 不登校支援ネットワーク 2011年5月26日
○目的
つらい体験を共有した子どもたち同士が、安心・安全感とつながりを回復し、トラウマ反応が軽減することを助ける。
 
○手順
*リーダー:担任の先生など。できれば複数・男女ペアが望ましい。
*対象年齢:小学校中学年以上
*人数:46名(リーダーも入れて) 
クラスの人数に応じて、他の先生にも入ってもら う
*時期:生命保護のための生理的・物理的安全が確保され、学校が再開後少し落ち着いてから。(状況によって違うので一概に「○○週間後から」とは言えない)
*時間設定:学活の時間などを利用して数回行う。
1.深呼吸、身体ほぐしなどリラックスできるような活動を行う。
2.まずリーダーが、「原則」を読んで確認する。
3.あらかじめ決めておいたテーマについて、まずリーダーが話す。
4.次にグループのメンバーが一人ずつテーマに沿って話す。
5.一人が話し終わったら、他のメンバーは一言ずつ感想を言う。「よかったね。」など。
6.最後にリーダーが、体験のシェアについてメンバーを労う
 
○原則
1.一人が話すときは、他の人は否定しないで聞く。質問はしない。
2.話したくないことは話さなくていい。
 
○プログラム実施上の留意点
1.まずは双方向でなく一方的コミュニケーションを。フリートークを入れると話題が広がりすぎて、子どもたちが不用意に傷ついてしまう危険性があるためです。
2.最も注意すべきことは話しているうちに抑えていた感情が流出してきて制御できなくなることです。その状態が生じると自我がより不安定になり精神的にバランスを崩してしまう可能性があります。それを回避するためには以下の注意が必要です。
テーマ設定は、まずは「ほっとしたこと」「楽しかったこと」「今日頑張ったこと」などつらい体験に直接触れないテーマにします。「つらかったこと」「悲しかったこと」をテーマに選ぶのは、子どもたちの様子や時期を見て慎重に行うべきでしょう。特にクラス単位で多くのグループを指導する場合にはつらい体験に直接触れるようなテーマは避けるべきです。
テーマについて語る時間をあまり長くすると押さえていた感情が流出しやすくなります。時間はせいぜい数分くらいに設定すべきです。最初は短く設定し、だんだん長くしていくのも一つの方法です。
もし感情の流出が起こり制御がきかなくなる兆候が見られたら、指導者が次のような言葉で即時に介入して話をやめさせます。ポイントは「現時点で生活の中でできていることをきちんと評価し、肯定的な自我イメージをもって」プログラムを終えることができるようにしてあげることです。
「つらい経験をしてとても苦しかったんだよね」
「でも、決してあなたが悪いのではありませんよ。」
「そんな大変な経験をしたのに、あなたは現在の状態できることを精いっぱいやっているよね。それはとても努力が必要なことだと思うよ。大丈夫だよ。」
それでもおさまらないほど動揺が激しい場合には,言葉かけと同時に,リーダーが「肩に手を置く」「手を握る」などのボディタッチによって気持ちを静めることが効果的です。したがって,セクハラ等の誤解をさけるために,リーダーは男女ペアで行うことが理想的です。
4.個別面談や心理教育と組み合わせて行うと良いでしょう。特に気になる子どもはスクールカウンセラーや専門機関につなぐことを検討します。
5.学校の先生自身や、保護者もつらい体験を負っています。このようなグループでの体験のシェアの機会を持つことが役に立つと思います。このプログラムは大人でも実施可能です。
 
 
*参考文献
「心のケアの原則」富永良喜先生(兵庫教育大学)(H.23.3.21 「心の相談緊急電話」開始にあたっての勉強会(日本精神衛生学会他主催)資料より)
 
 
** 以下よりこのプログラムおよび関連資料をダウンロードできます。 **